新型コロナウイルス対策として実施されたロックダウン(都市封鎖)により、図らずもインド大都市の大気がきれいになっています。コロナウィルスのもたらした思わぬ恩恵ですが、これを機に汚染物質の排出を削減し、地球温暖化に阻止しようという機運が高まっています。
2019年版「世界大気環境報告書」(IQエア・エアビジュアル)による大気汚染が深刻な上位30都市のうち、21都市をインドが占めていました。大気汚染の程度は、大気質指数(AQI: Air Quality Index)により判定できますが、インドの場合自動車や工場からの排煙に加えて農地での野焼きやディワリ(ヒンドゥー教の新年のお祝い)の爆竹や花火も影響していると言われています。2019年の国別二酸化炭素の排出量(IEA: International Energy Agency)によるとインドは、中国、アメリカに次いで第3位ですが、今回のコロナウィルス騒動でこの順位も下がることが予想されています。
大気汚染の原因はPM2.5等の粒子状物質及びNOx(窒素酸化物)等のガスであり、地球温暖化には最大の温室効果ガスである二酸化炭素排出がこれらの物質の滞留に大きく影響します。何れの物質も人間の社会生活により発生するものであり、生活向上に伴い増大するため削減することは難しいのが現実です。
新型コロナウイルスの大流行により冷え切った経済の再起を世界中で模索していますが、環境意識の高いヨーロッパを中心に脱炭素社会や環境問題への取組も併せて行う「グリーンリカバリー(Greenrecovery)」が提唱されています。インド政府は、大気汚染の改善を継続すべく、再生可能エネルギーの活用や電気自動車の普及促進を含めたグリーンリカバリーの推進を模索しており、インドの大手企業20社の代表も2020年8月にグリーンリカバリーの推進活動に協力する文書に署名しました。
世界的な医療危機と経済危機という二重の困難に取組む中にあって、グリーンリカバリーを同時並行的に進められるか否かは今後のインド政府と企業の努力にかかっていると思いますが、大手企業の代表の署名が形だけということにならないことを祈ります。
写真は2019.11(左)及び2020.3(右)のインド門の遠景(CNN)