米中貿易摩擦が長引く中、インドが米中双方に対する輸出強化を思索しています。
2019年6月5日米国は、貿易障壁が米国の輸出に悪影響を及ぼしているとして、インドに対する一般特恵関税制度(GSP: Generalized System of Preferences)を撤廃しました。それに対して、6月16日インドは、米国から輸入するアーモンド、リンゴ等28品目の関税を引き上げる対応措置を実施しました。
2018年のインドのGSPを利用した対米輸出額は65億8,600万ドルで、インドからの輸出額の11.7%を占めており、GSP対象国の中で最も多い額となっています。それに対して、インドの米国からの輸入額は約62億ドルであり、28品目の関税引き上げ措置による追加収入は、約2億1,700万ドルと見込まれています。
米中貿易摩擦の長期化は、世界的な貿易枠組みの再構築等の波及効果を生み出しています。インドは、米国との貿易摩擦が顕在化するなか、米中が互いに関税を掛け合う品目を見据えて、米中双方に比較的優位な立場にある品目を選定し、米国または中国に輸出できる可能性を模索しています。
両国への輸出を増やすことができる品目は、インドからの輸出に余裕のある品目で、相手国の市場にアクセス可能な品目になります。
インドのPHD商工会議所が輸出品目を検討した結果、ディーゼルエンジン、銅鉱石、無機化学薬品、繊維製品等が中国に対する輸出増加の可能性があり、綿、プラスティック、調剤製品、有機化学薬品等が米国に対する輸出増加の可能性があるとしています。
米国及び中国に対する輸出を拡大するためには、輸出に関する信用の構築が第一であり、インド政府としても輸送コストの削減や手続きの緩和等の改善に努めているところですが、この米中貿易摩擦をマイナーなイメージで捉えず、それをチャンスと捉えて虎視眈々と輸出の拡大に結び付けようとするインドの逞しい商魂には舌を巻きます。