新型コロナウイルスの蔓延により、全世界的な企業活動に大きな影響を及ぼしています。
企業間の部品等の納入延期や債務不履行等の問題が発生した場合、契約書記載の不可抗力条項の発動が検討される状況が起こり得ます。不可抗力条項は、契約当事者間でコントロールできない戦争、暴動、自然災害等により契約の履行ができない場合に、履行義務者を免責とする条項です。
2020年2月19日、インド財務省は、インド政府が物資等の調達を行う契約において、新型コロナウイルスが不可抗力事由のうち自然災害(Natural calamities)に該当し得ることを表明しました。(不可抗力条項に保健衛生上の危機「パンデミック等」が記載される場合もあります。)ただし、免責の期間は、新型コロナウイルスの影響が続いている期間に限られます。なお、不可抗力事由により、契約履行義務の全部または一部が履行できない状態が90日以上続いた場合、何れの契約当事者も相互に金銭的賠償をすることなく契約を解除できるとしています。
不可抗力条項が定められていない契約においても、政府の移動制限等の後発的な措置により履行不能になった時、契約そのものを無効にすることができる場合があります。ただし、契約履行の前提が完全に覆り、義務の履行が不可能なことを立証することが必要です。
インド政府は、2020年3月2日から、以前に発給された全てのビザを無効にし、3月25日からインド全土のロックダウンを継続しており、日本企業にも影響を及ぼしています。新型コロナウイルスのパンデミックによる不可抗力条項を理由として、一方的に債務を履行しない旨通告されたり、代金支払いの一時停止等の問題が実際に発生しています。
新型コロナウイルスの感染拡大は、対インドのみならずクロスボーダーの取引にも影響するため、取引につながる国の不可抗力に関する判断に注目する必要があります。
不可抗力はインドの英文契約書の契約条項に、よくForce Majeureと記載され使用されています。