インドでは3月25日から新型コロナウィルス感染拡大防止のため外出禁止措置が実施され、それに伴って経済活動が停止した結果、多くの出稼ぎ労働者が職を失い、帰郷せざるを得ない状況となりました。公共機関が動かないため数百キロを歩いて帰郷する労働者の映像が日本のNHKニュースでも放映されていました。
そのような中、12歳の出稼ぎ少女が帰郷しようと約150キロ歩いた末に亡くなるという悲劇が起こり多くの人に悲しみを与えています。
悲劇の概要は以下のように報道(4月29日付時事)されています。
『民放NDTVなどによると、南部テランガナ州のトウガラシ農園で出稼ぎをしていたジャムロ・マクダムさん(12)は15日、故郷のチャッティスガル州に向け歩きだした。職を失い帰郷せざるを得なくなったとみられる。日中の気温は30度を超えるが、公共交通機関も止まる中、徒歩しか選択肢はなかった。
インド政府は3月25日から感染防止のため全土で徹底した外出禁止措置を取っている。外出が見つかり捕まれば、棒でたたかれるなどの罰が待っており、帰郷もできなくなる。マクダムさんは検問を避けるため、一緒に出稼ぎに来ていた親族らと森を切り開きながら約150キロ歩いたが、自宅までは残りあと15キロ足らずの地点で力尽き、息絶えた。
父のアンドラムさんはNDTVに対し「3日間歩き続けていた」と話した。死因は脱水症状と栄養失調とみられている。マクダムさんは「1日に最大で400ルピー(約560円)程度を稼ぎ、ほとんどを家族に送金していた」(英BBC放送)とされ、新型コロナを契機に貧困層の悲惨な現実も改めてクローズアップされている。』
この報道を読みインドの貧困層の悲惨さを改めて思い知らされました。筆者堀内は、過去にガボン、インド、アフガニスタン、バングラデシュ、イラクにそれぞれ数年間ずつ仕事の関係で居住し、貧困で苦しむ人々の苦境を実際に垣間見てきたこともあり、世界で貧困にあえぐ人々の現状がマスコミ等で報道されるたびに気の毒な思いと申し訳ない気持ちで一杯になります。人類が宇宙に行ける時代なのに、その日の飢えをしのぐために命をかけて必死に生きようとしている人に救いの手を差し伸べることのできないという現実は本当に情けなくて悲しいです。
すべての人が貧困に苦しまず、平等に人間らしい生活ができる社会をめざして、私たち一人一人は、世界の貧困の現実を正確に認識し、貧困撲滅のために何かできないか真剣に考え、多くの智慧を出し合い行動する必要があるのではないでしょうか。