インドは急激な経済発展に伴い、世界有数のエネルギー消費国となり、多くは埋蔵量世界第5位の石炭に依存しています。2017年の1次エネルギーの消費比率は、石炭44.3%、石油25.3%、再生可能エネルギー21.2%、天然ガス5.8%、原子力1.1%、その他2.3%で、石油の大部分は輸入に依存しています。バイオマス燃料を石油の代替えエネルギーと位置付け、2030年までにバイオエタノールのガソリン混合率を20%、バイオディーゼル混合率5%を目標としていますが低い状態が続いています。
「自然エネルギー世界白書」による、2017年の世界の再生可能エネルギーの使用割合は、83.7%が発電として使用され、10.7%が冷暖房の熱源、残りの5.6%が車両等輸送用燃料として使用されています。インドにおいて、車両等輸送用のバイオエタノールの普及率は3%程度に留まっています。
インドのバイオエタノールは、主としてサトウキビの残渣(糖蜜:モラセス)から精製されますが、原材料は気候変動、食料の安全保障政策等様々な影響を受けます。砂糖の国内価格の上下により、作付面積が4~5年単位で変化(シュガーサイクル)するため、砂糖の生産量は大きく変動します。そのため、サトウキビ以外の食用でない供給源として、植物の種子・茎や農業残渣等の活用が検討されています。
インドは世界第2位の砂糖生産国で、第3位の消費国でもあります。新型コロナ対策のためロックダウンが続くなかで、世界中の砂糖の需給バランスが崩れた結果、インドのバイオエタノールの増産が期待されています。現在、バイオエタノールの一部は、国内の手指消毒剤として使用されています。
代替えエネルギーとしてのバイオマス燃料は、農家の収入増、雇用の創出、農業廃棄物の削減、並びに輸入エネルギーの減少を目的としていますが、新型コロナウイルス対策の長期化やその他の再生可能エネルギーの動向に影響され、その目的達成の見込みは立っていません。